ファクタリング契約における注意点やリスク
ここでは、自社が契約を結んだファクタリング会社が倒産してしまった場合どうなってしまうのか、という部分を説明します。
ファクタリング会社の倒産によって発生するリスク
売掛金を入金しているかどうかが重要
契約を結んでいるファクタリング会社が倒産してしまった場合、その時点で入金が完了していれば自社にリスクが発生することはありません。しかし、未入金の状態で倒産してしまった場合、当初入金予定だったはずのお金を回収できなくなってしまいます。倒産時点で売掛先企業が期日通りにファクタリング会社に売掛金を支払っていたにも関わらず、他の債権者にそのお金を回収されることもあり得ます。
さらに、留保金が支払われなくなるかもしれないというリスクも発生します。
これらのことから、ファクタリングを利用する際は契約を結ぶファクタリング会社の選定を慎重に行う必要があると言えます。
このようなファクタリング会社には注意が必要
ファクタリング会社の中には、一部悪質な手口や嫌がらせに近いことをしてくるところが存在します。悪質なファクタリング会社は、具体的にどのような手口を使うのでしょうか。
悪質なファクタリング会社の手口
①法外な額の手数料の設定
ファクタリングの手数料の相場は、初めての契約であれば15~20%くらいです。しかし悪質業者は手数料を平気で30%以上に設定したり、通常手数料が高いとされる2社間ファクタリングを5%前後で勧めてきたりと、到底考えられないようなことを仕掛けてきます。
②売掛先企業への売掛金譲渡通知
2社間ファクタリングを行った場合、売掛先企業はファクタリングに直接的に関わることはありません。売掛金の譲渡は自社とファクタリング会社の2社間でのみ行われます。しかし悪質なファクタリング会社は、契約の流れの中で何か気に入らないことがあったときに、売掛先企業に売掛金が譲渡されたことが分かる資料を送付するようなことがあります。このようなことをされると、当然売掛先企業に自社とそのファクタリング会社との間でファクタリングが行われていたことが知られてしまいます。
確認すべき6つのポイント
資金調達をしたいという一心でファクタリングを利用しても、申し込んだところが悪質業者であればまさに本末転倒です。場合によっては大きな被害に遭ってしまいます。利用する会社を選ぶときに確認すべき6つのポイントを紹介します。
①契約書の控えをすぐに渡してくれるかどうか
契約書は発行時に必ず控えをもらうようにしましょう。悪質業者は途中で中身を改ざんする可能性があるからです。
②請求書の確認をすぐに取らせてくれるかどうか
費用の請求額を契約時まで伝えてこないところは悪質業者である可能性が高いです。契約前に書面上でしっかり提示してくるところと契約を結ぶようにしましょう。
③手数料の額が相場の範疇にあるかどうか
初めてのファクタリング手数料の相場が15~20%であることをふまえた上で、提示された手数料が状況や内容に見合ったものであるかどうかしっかり確認しましょう。
④請求額の内訳内容が適当であるかどうか
ファクタリング会社に支払う費用の内訳の確認も忘れずに行ってください。債権譲渡登記は7~9万円前後、そしてそれを抹消するには1~2万円ほどの手続き費用が発生することも覚えておきましょう。
⑤入金日が適当であるかどうか
悪質業者は、売掛先ごとの入金日に振り込まないこともあります。入金される日はいつなのか、契約前に確認しておいてください。
⑥信頼できる実績や評判を備えているかどうか
国内には1,000社以上のファクタリング会社がありますが、その全てが信頼のおける会社とは限りません。ここに書いてある通り、中には悪質業者と呼べるところも若干数存在します。そのようなところに引っかからないよう、ネット上にある情報サイトを利用して目星を付けているファクタリング会社の実績や評判を調べてみましょう。ファクタリング会社を紹介している情報サイトには、利用者からの評判をはじめ様々な有益情報が掲載されています。
ファクタリングでよくあるトラブル
実際にファクタリングを利用した際、良くない業者と契約してしまった場合に起こり得るトラブルはどんなものがあるでしょうか。悪質な業者によるファクタリングと、よくあるトラブル事例についていくつかご紹介します。
ファクタリング業者側によるトラブル
これは悪質なファクタリング業者と取引をしてしまった場合、起こりやすいトラブルです。
①法外な手数料を請求された
これは、ファクタリングで最もよくあるトラブルだといえるのではないでしょうか。
ファクタリングの場合、銀行や消費者金融などと違い、法律によって手数料や利息の制限がかけられていません。そのため、ファクタリング業者は、自社で好きなように手数料を決めることができるため、法外な手数料を請求してくることも少なくないようです。
ファクタリングの手数料は一律ではなく、条件やプランによって異なってくるのが分かりにくい部分です。償還請求権の有無によっても変わってきますが、目安としては、3社間であれば額面の5%、2社間であれば15%~25%が正当な手数料といえるでしょう。
②高額な利息で資金繰りがますます苦しく
利息制限法によって規制されていないファクタリング業者では、悪質な場合、年利20%~30%ほどの利息が設定されている場合もあります。この金利分を支払わなければならないことによって、ファクタリングを利用する前よりも、資金繰りが苦しくなってしまうというトラブルも発生しています。
もちろん法律は関わってきませんので、高額な金利であっても違法ではありません。契約をする上で利息は最も大切なポイントとなってきますが、しっかりと確認したうえで、利息が明記された契約書を受け取ることを忘れないようにしてください。
③契約条件が契約時と違う
悪質なファクタリング業者では、契約書の改ざんなどの可能性もありますが、そもそも契約書が存在しないという場合もあります。その場合は当然、取り交わした契約内容を後から確認することができず、契約時点の手数料よりも高い手数料を取られた、入金されるべき日に入金されなかったなどのトラブルにつながります。
お金に関する契約なのですから、どれほど条件が良く見えるファクタリング業者であっても、契約書が存在しない業者とは契約しないでください。
④担保や保証人が必要になる
債権をファクタリング業者に渡すことによって資金を調達するファクタリング。債権回収が不可能になったとき、担保や保証人を要求されたというトラブルもあります。
担保や保証人を要求する融資法は「債権担保融資」という法律で定められた融資となり、ファクタリング業者では行うことができないものです。必要だといわれると担保や保証人をつけてしまいそうになる方もいるのですが、このような要求をしてくるファクタリング業者は悪質です。
⑤2社間ファクタリングなのに債権譲渡通知を送付される
2社間ファクタリングでは、取引先に債権譲渡通知を送付しないことになっていますが、2社間で契約を結んだにも関わらず、債権譲渡通知を送付されるというトラブルが発生しています。
これは、悪質なファクタリング業者が、債権譲渡通知を使って自社に有利な取引を進めようとする手口です。
取引先に債権が移転したことを知られた場合、ファクタリングを利用したことが知られてしまいますし、資金繰りに苦しいのだということも知られてしまいます。債権譲渡通知を送付されるということは、今後の取引に影響が出てくることも十分に考えられます。2社間の場合、債権譲渡通知は絶対に渡さないようにしましょう。
利用者側によるトラブル
ファクタリングでは、利用者がトラブルを引き起こしてしまうというケースも存在します。ファクタリングに関する知識を深めておかないと、ご自身がトラブルを招いてしまうこともあるのです。
①虚偽の申告でファクタリングができなくなる
これはファクタリング業者によるトラブルではなく、利用者からのトラブルです。ファクタリングを契約するときには審査があり、その結果によって調達できる資金の額は変わってきます。
しかし、高額の資金が必要だと考えるあまり、審査に必要な情報で虚偽の申告をしてしまうと、ファクタリング自体が利用できなくなってしまいます。多少希望の額より少なくなったとしても、利用できないよりは利用できた方が良いでしょう。申告内容は正確な情報を申告しましょう。
②債権の二重売却で詐欺罪に
ファクタリング業者の手に渡っている債権を、他の業者に譲渡してしまうというトラブルです。一見、そんなことはしないだろうと思ってしまいますが、ファクタリング契約を結んだ後に、もっと条件の良い業者を見つけた場合に起こりやすく、つい条件の良い業者とも契約を結んでしまうという場合もあります。
債権が移転していることを知らなかったということは考えにくいため、ファクタリング業者に法的措置を取られた場合、詐欺罪になってしまいます。このような事態を引き起こさないためにも、利用前にファクタリング業者の選択にはこだわっておきたいものです。
ちなみに、金融庁のHPでは違法な金融業者への注意喚起として、以下のアナウンスをしています。悪質なファクタリング会社に関わらないためにも、参考にしてください。
参照:金融庁HP「違法な金融業者にご注意!」大手証券会社で長年営業に従事してきた1級ファイナンシャルプランナー。現在は2児の母。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。
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