ファクタリングの会計上の仕訳
このページでは、企業によって異なるファクタリング債権の会計処理方法、その仕訳(勘定科目など)の注意点について説明します。
ファクタリングの会計処理の仕訳(勘定科目など)とは
実際にファクタリング取引を利用する際、企業によって会計処理の仕訳方法が異なるので、ここでは一般的な方法論として勘定科目などを紹介しておきます。
例として、売掛債権が1千万円、ファクタリング割引料を1.475%、期間を3ヵ月と設定した場合、以下のような2つのパターンがあります。
パターンA
売掛債権発生時 | 売掛金1千万円 | 売上1千万円 |
---|---|---|
期日前支払の場合 | 現金996万円 支払割引料4万円 |
売掛金1千万円 |
支払期日の場合 | 現金1千万円 | 売掛金1千万円 |
パターンB
売掛債権発生時 | 未収金1千万円 | 売上1千万円 |
---|---|---|
期日前支払の場合 | 現金996万円 債権売却額4万円 |
未収金1千万円 |
支払期日の場合 | 現金1千万円 | 未収金1千万円 |
ここで注目しておきたいのが、売掛金のまま処理することもあれば、未収金として処理することもあるということ。また、売掛金の場合はその対象が得意先かファクタリング会社かがわかるように、科目を細分化しているケースもあるようです。
上記はあくまで一般的な例。実際には各社の決まり事やケースによって違ってくることもあるでしょう。いずれにせよ不明点が出てきたらすぐに頼れるファクタリング会社を選ぶと良いと思います。
相手勘定科目にファクタリングがない場合の会計処理方法
自社で採用している販売管理ソフトによっては、相手勘定科目にファクタリングがないことも考えられます。
こうした場合、手形として処理しておくケースが多いようです。売掛金として残してしまうと請求書の残高として残ってしまうので、それを避けるための処理というわけです。
また、ファクタリングの割引料の処理について、支払利息ではなく「売上債権売却損」「売上債権譲渡損」での処理の方が、会計の基準(中小企業会計指針)としても良いとされています。これらは営業外費用科目で、売上債権譲渡損・売上債権売却損といった科目を使っていない企業の場合、その他雑支出として計上してもいいでしょう。
仕訳とは?
仕訳は、取引が発生した際、その取引を貸借対照表の勘定科目で分けるという処理方法のことです。借方には資産と費用が、貸方には収益と負債が分類されることになります。
基本的に仕訳は、取引が発生した場合その都度行う必要があります。勘定科目にどのような取引があったのかをデータとして蓄積させていくので、その都度仕訳をすることで売り上げの状態や仕入れの状態、現金・売掛金など全体的に状態を把握するために役立ちます。
仕訳を取引があるたびに記入し、それが1年分蓄積して資産と負債がわかるものを貸借対照表といい、利益と損失がわかるものを損益計算書といいます。
例を1つご紹介します。
①10万円で仕入れをした場合
借方:仕入れ 5万円(費用)
貸方:現金 5万円(資産減)
という形になります。
どんな取引があり、どのようにお金が動いたのか、ということを1つ1つ処理する、それが仕訳です。
ちなみに、「日本公認会計士協会」では、ファクタリングの仕訳について説明されています。以下を参考に確認されてはいかがでしょうか。
参照:日本公認会計士協会「金融商品会計に関する実務指針」貸借対照表の記入
貸借対照表は、会社がどのような状態か、財務状況を示す大事な資料です。できるだけ負債が少ない状態を目指すことが、会社の評価を高めるためには大切。ファクタリングは、貸借対照表の見栄えを良くする方法、ともいわれています。基本的に売掛債権が発生したときが中心となるため、例として100万円の取引で売掛債権が発生したときにファクタリングを利用した際、どのようになるのか貸借対照表の記入をご紹介します。
まずは通常通り、売掛債権が発生し、決算が行われた場合。
借方:売掛金(資産増)100万円 貸方:売上(利益) 100万円
となりますね。
その後、決済で売掛金が入金された場合、
借方:現金(資産増)100万円 貸方:売掛金(資産減)100万円
というような形ですね。
次に、ファクタリングを利用した場合。 借方:未収金(資産増)80万円 売掛債権売却損(費用)20万円 貸方:売掛金(資産減)100万円 こうなります。ファクタリングの手数料を20%とした場合でご紹介しているので、売掛債権売却損が発生しています。ただし、まだ実行しただけで現金化はされていません。 そしてファクタリング代金の入金があった場合。 借方:現金(資産増)80万円 貸方:未収金(資産減)80万円 となります。未収金の分が現金に変わるという考えですね。
ファクタリングは貸借対照表を軽くすることが大きなメリットです。ただし費用が発生することで、収益を圧迫する可能性もあります。とはいえ、売上債権を早く資金化することができる、それによって資金繰りがしやすくなる…それとともに貸借対照表のオフバランス化を図ることもできるという、今の経営トレンドにぴったりの方法といえるでしょう。
会計上の注意点
ファクタリングを利用する際の会計で注意しなくてはいけないこともあります。それほど難しいことではないのですが、やはり通常の会計処理とは異なります。ファクタリングは資金調達の1つの方法ではありますが、負債は会計処理上で増加しません。
ただし、会計ソフトを利用している場合、ファクタリングを使いたくても項目がない…ということもあります。売掛金をそのままにしておくことはいけないので、それを回避しようと手形として処理をしなくてはいけないこともあります。また、割引料も債権譲渡損、支払い割引料といった項目が会計ソフトにはない場合、雑支出としての処理も必要です。
それ以外にも会計をする上で不安なこと、どうしたらいいのかわからないこと、ファクタリングを利用するとなると出てくる可能性があります。新しいことを始めるとなるとわからないことがあるのは当然です。不安になったときには、どのような書き方が正しいのか、どうしたら適切な会計処理といえるのかをチェックしてくれる税理士に相談してみると安心です。
仕訳の仕組みを理解してファクタリングを利用しよう
ファクタリングを利用するにあたって、必ず押さえておかなくてはならない仕訳。仕組みとしては決して難しいものではないのですが、企業によって仕訳の方法が異なるため、初めてファクタリングを利用する方などは戸惑うこともあるかと思います。
不明な点がある場合は、会計士や税理士といった専門家に相談するのが得策。ファクタリング会社によってはこういった部分のサポートをしてくれるところもあるので、分からないことは聞いてみると良いでしょう。
ファクタリングを利用して負債を減らせば、銀行からの融資も受けやすくなります。基本的にファクタリングによって会計処理が複雑になるということはないため、仕組みをよく理解して上手に活用するようにしてください。
大手証券会社で長年営業に従事してきた1級ファイナンシャルプランナー。現在は2児の母。自営業の夫の仕事を手伝う傍ら、自身の経験を活かし、ウェブライターとして活動中。わかりやすいをモットーに、さまざまな場面でのお金について解説します。
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